版画のことを英語に訳すと Print となる
もう少し丁寧な訳では Art Print なのだが
美術作品に関係する我々にとって
版画をプリントと訳されることには少し抵抗がある
しかし版画の元々の目的は
多くの人々に大事なことを伝承していくために
聖書や経典 コーランなど または 史書や詩や文学のために
印刷物して活用していくものがはじまりだから やはりプリントが正しい
ものが溢れ 情報が錯綜し
大量に作られ 大量に消費されていく中での印刷物
現代の価値観で印刷物を考えると安物の使い捨てとなるが
むかし印刷物はもう少し価値のある消耗物だったかもしれない
浮世絵を考える時 いつも江戸時代の文化の高さを想うのだが
浮世絵も やはり当時のポスターにすぎない
いま あらためて その美術性 芸術性 ものつくりの丁寧さを感じるのは
我々が発明した便利さや簡略化によって捨て去られた
先代のラジカルな作法や 美しさの考え方が
時代を超えた 美の価値を見出したからだ
時代が進み 現代の使い捨ても 無用の長物となった時
未来の人々が 我々のプリントを美しく想う時代があるとすれば
江戸時代 浮世絵に触れた人々が感じていた美しさと
我々の見つめる美とは 隔離があるのかもしれない